退職をした後でも、未払いとなっていた残業代の支払いを求めることは可能です。ただし本来の給料日から何年も経っていると請求できなくなる可能性がありますし、証拠集めも難しくなってしまいます。この点には注意が必要です。
当記事では退職後の残業代請求について説明していますので、「残業代を払ってくれない」このような悩みを持つ労働者はぜひご一読ください。
残業をしていたにもかかわらず、次のようにさまざまな背景で残業代が支払われていないことがあります。
労働者としては「残業までして働いたのだから、賃金を支払ってほしい」と考えるのは当然のことです。そのため未払いの残業代・賃金が残っているときでも諦める必要はありません。
また、「退職をしてしまうと請求できなくなってしまうのではないだろうか」と不安に思うこともあるかもしれませんが、基本的には請求可能です。退職をしたかどうかは賃金を請求する権利に影響しません。
退職をしても請求権はなくなりませんが、支払を実現するために大切な「証拠集め」の難易度が上がってしまいます。退職後の請求で一番問題となるのはこの点でしょう。
退職前であれば就業規則やタイムカード、日報などの確認が取りやすいですし、これからの労働時間・業務内容などもメモとして残していくことができます。
しかしながら、すでに退職をしている場合は職場に立ち入ることすら難しいですし、各種資料を確認する機会がなかなか得られません。そこで「会社に対して開示請求を行う」もしくは「裁判所を介して証拠保全や文書提出命令の手続を行う」といった方法も検討することになります。
ただしこれらの手続を行ったとしても有益な証拠が確保できる保証はありませんので、要注意です。現在退職をしていないのなら、弁護士にも相談して今からできることはないか、アドバイスを求めてみましょう。
退職前・退職後、どちらのタイミングでも未払い残業代の請求はできますが、その権利が行使できるようになってから長い期間が経過してしまうと「消滅時効」にかかってしまい請求権が消滅してしまいます。
法律ではこのように、一定期間経過することで権利が消滅する仕組みが設けられています。
時効の期間は権利の内容によって異なり、賃金の請求権に関しては原則として「残業代をもらえる権利が発生したときから5年間」が消滅時効期間として定められています。ただ、猶予措置として現在は“3年間”で時効消滅することになっています。
残業代をもらえる権利の発生日とは、本来残業代が支払われるはずであった給料日のことです。そこで、退職をするかどうかではなく、そこから起算してどれだけの期間が経ったかどうかに着目しなくてはなりません。
時効により請求権が消えてしまう前に支払いを求めましょう。
ただし、裁判外で直接残業代の支払いを求め、会社が無視してそのまま一定期間経過してしまうと消滅時効は完成してしまいます。
そこで①時効の完成を妨げる(時効の完成猶予)、または②時効完成までの期間をやり直す(時効の更新)ための工夫が必要です。
一般的には、まず内容証明郵便を使って支払いを求めます。これによって6ヶ月間は時効完成を防ぐことができますので、その間に裁判の準備を進めることになります。弁護士に請求手続を依頼しておけば会社も早めに対応してくれますし、未払いの残業代に困ったときは退職後でもかまいませんので弁護士にご相談ください。