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労働条件をめぐるトラブル例とそれぞれの対処法について

不当解雇

労働条件をめぐって従業員と揉めてしまうことがあります。紛争が大きくなってくると対応にかかる手間やコストが大きくなるだけでなく、社会的な信用問題にも影響してきます。

そこでトラブルになりやすい事例を理解し、何が問題なのか、トラブルを防ぐためにはどのように対処すれば良いのかを知っておくことが重要といえます。

以下でその例をいくつか紹介していきますので参考にしてください。

 

求人票の内容と実態にギャップがある

求人票は、従業員を募集するときに作成する労働条件を記載した文書のことです。

求人票の作成に関しても法律上の決まりがありますので、記載事項に漏れがないことや事実と異なる情報が記載されていないことに注意しなくてはなりません。

求人票には「基本給30万円」とあるのに、いざ雇用契約を交わす場面になって「基本給は25万円です」と伝えたのでは応募者も納得できません。
このようなわかりやすい内容だけでなく、若干の違い、ルールの未記載でもトラブルに発展する可能性があります。

記載の仕方にも留意しましょう。試用期間を設けるときはその事実を記載しないといけませんが、単に「有り」と書くだけでは不十分です。「1ヶ月」や「3ヶ月」などと期間についても書く必要があります。
思っていた場所と勤務地が違う!と揉めるリスクもありますので、就業場所については「本店または支所のいずれか」などとあいまいにするのではなく具体的な場所を指定して記載するべきです。

 

試用期間を設けたときの解雇

試用期間は「企業側が労働契約の解約を留保する期間」ともいえます。

ただ、労働条件に試用期間を定めたとしても、その期間中に企業側が自由に解雇できるわけではありません。

本採用後の解雇に比べると要件は緩和されるものの、そもそも解雇が法的に認められる場面はかなり限られており、就業規則にも解雇事由を定めていることなどが求められます。

試用期間中では解雇事が認められやすいものの気楽に「採用はやめました」などと伝えることはできません。従業員との間でトラブルになり、この場合は訴訟においても企業側が不利な立場に立たされてしまうでしょう。
そこで、「選考時には知ることのできなかった、従業員として必要な能力を著しく欠いていることがわかった」「経歴を詐称していた」などの理由が必要になります。

 

固定残業代制による割増賃金の未払い

「残業代は支払わない」などの労働条件を提示し、従業員がこれに同意したとしても、残業代の未払いが正当化されることはありません。

労働基準法上、その労働条件は無効なものとして扱われます。

また、「毎月〇万円の残業代を支払う」などと労働条件を定めることは可能ですが、固定残業代制にしたからといって、いくら残業をしても固定の手当てで良いことにはなりません。

少なくとも、何時間分の残業に対していくらの残業代を支払うのかが明確にされていないといけませんし、その想定した残業時間を超えた分については法令に従った割増賃金を支払わなければなりません。

 

ボーナスを支払わない

ボーナスの支給は原則として企業の義務ではありません。そのため労働条件としてボーナスに関する規定を定めていない場合は、一切支払いをしなくても違法とはなりません。

またボーナスに関するルールが定められているときでも、明確に金額を定めておらず、確約するような規定を置いていなければ、不支給が常に違法になるわけではありません。
「業績不振により賞与の一部をカットすることがある」などと定めることも多いですし、支払えない可能性があることを規定しておけばトラブルは避けやすくなります。

しかしながら「〇月に、〇ヶ月分を支給する」などと明確に支払うことを定めてしまっているときはボーナスの支給義務が生まれてしまいます。
ボーナスの支払いができなさそうなときは、一度就業規則の内容をチェックしておきましょう。

 

従業員間に待遇格差がある

役職が違う・仕事内容が違う・働き方が違う・責任の重さやリスクの大きさが違う・求められているノルマが違う、など同じ企業に勤めている従業員間にも差があります。

従業員に支払う給与などは労働への対価として支払うものですので、こういった差がある場合は対価に差があっても問題はありません。

しかし、「同じように働いているのに私には手当がない」「パートというだけでボーナスがない」と待遇格差をめぐってはトラブルが起こることもあります。

同一労働同一賃金の考え方に基づいて、不合理な待遇格差は是正されなければなりません。法律上も職務内容等が同じであるにもかかわらず待遇差を付けることを禁じており、例えば正社員・契約社員・パート、といった肩書だけで待遇差があるのは不当と評価されてしまいます。

差を付けてしまっている場合は、その正当性について一度見直して、必要に応じて格差をなくす措置を取るようにしましょう。

 

引っ越しを伴う転勤を求めた

あらかじめ労働条件に転勤がある旨を明示しており、就業規則でも「業務上の都合により転勤を命じることがある」旨の規定が置かれているときは、企業は個別に同意を得ることなく従業員に対して転勤を命じることができます。

ただ、転勤を命じることができるのは業務上の必要性がある場合に限られます。不当な動機による転勤命令は権利の濫用と評価される可能性があるのです。

仮に業務上の必要性がある場合でも、企業側には一定の配慮が求められます。特に引っ越しが必要になる転勤に関しては生活への影響度合いが大きいことから、無制約に命じることはできないと考えられています。

そのため「採用時に伝えていたから」「就業規則に定めているから」という理由を盾に権限を乱用することのないように注意しなくてはなりません。

 

労働条件を変更した

労働条件を変更することは可能ですが、当然、企業側が一方的に就業規則を変えてそのルールを強いることはできません。

原則として従業員側の合意がなければ不利益な労働条件の変更はできないことは覚えておきましょう。

ただし、次の条件を満たせば就業規則を変更することができ、労働条件を変更することが可能となります。

 

  • 次の事情に照らして合理的な変更であること
    • 従業員の受ける不利益の大きさ
    • 変更の必要性
    • 変更後の就業規則の内容の相当性
    • 変更に先立って行われる従業員等への情報提供や説明
  • 労働者の過半数から組織される労働組合または労働者の過半数を代表する者の意見を聴くこと
  • 変更後の就業規則を従業員へ周知すること

 

また、合意が得られたとしてもそれが従業員の自由な意思に基づいてなされたものでなければ意味がありません。断りづらい状況下で意見を聴くようなことはしないようにしましょう。