従業員が自己都合で欠勤を繰り返している場合、その頻度や悪質性によっては懲戒処分に処すことも検討します。しかし従業員自身の責任とは言えない、やむを得ない理由で働けない場合は別です。
怪我や病気、その他の理由でしばらく休まざるを得ないとき、会社としてはどのように対処すべきでしょうか。ここではやむを得ず休職する場合とはどんなケースなのか、その例と対象方について解説します。
休職理由にもさまざまなパターンがあります。代表的なものが「傷病休職」です。他にも介護をするための求職、起訴されたことに伴う休職など、どうしても働くことができなくなることがあります。
傷病休職とは、業務とは別の原因で怪我を負ったり病気になったりしたことを理由とする休職のことです。
例えば次のようなケースです。
休職する期間はその理由により異なり、これまでの勤続年数などにも対応して個別に評価されます。
やむを得ず働けなくなる理由の多くは傷病によるものですが、他にも「親の介護をしないといけなくなったため、施設や訪問介護の利用等、体制を整えるまでの時間が欲しい」といった理由で休職するケースもあります。
傷病とは別の自己都合による欠勤は「事故欠勤」とも呼ばれ、この欠勤が一定期間に及ぶとき、休職措置が取られることもあります。その場合は「事故欠勤休職」と呼んだりもします。
他にも次のような休職理由が挙げられます。
従業員から「働くことができない」「休職をしたい」と言われたり、従業員が欠勤を続けていたりするときは、まず状況の確認を行い、休職をするかどうかの判断を行います。
また、休職をする場合でもいつかは復職または解雇の判断をする必要があります。
まずは仕事を休む理由・原因についてヒアリングしましょう。働くことができない従業員に対していきなり解雇をすることはできません。
例えば傷病が原因であるとき、それが業務上負ったものだと原則としてすぐの解雇は禁止されています。もっともプライベートでの傷病が原因であるとしても解雇以外の選択肢を検討してからでなくてはなりません。
また、身体の不調を訴えているのであれば、証明として診断書を受け取るようにしましょう。会社だけで決断すべきではなく、医師による判断を確認してから対応の検討を進めていきます。
ヒアリングの結果、業務上の傷病ではなく、また、育児休暇など公的に認められた休業制度の適用対象ではないことがわかれば、休職の条件を確認していきましょう。
もし休職制度を設けていないのであれば、解雇の可否を検討します。
働くことのできない期間が長期間に及ばなければ雇用を継続することになるでしょう。また、自社で割り振ることのできる別の仕事がある、配置転換ができる、といった場合にも雇用を継続する方向で考えるべきです。休職制度を設けることは会社の義務ではありませんが、解雇に関しては従業員との間でトラブルが起こりやすいですし、慎重に考えなくてはなりません。
一方、就業規則で休職制度を設けている場合は、その条件に適合するかどうかを確認します。
例えば所定の期間中に治癒する見込みがあることなど、就業規則で定めた条件を満たすかどうかをチェックします。
いったん休職をすることになっても、その後休職をすることになった原因がなくならなければ、退職をすることになるかもしれません。
そこで一定期間が経過すれば復職の判断を行いましょう。仮に傷病を理由としており未だ治癒をしていない場合でも、休職前とは別の、負担の小さな業務があるのならいきなり解雇をしたり退職を求めたりすべきではありません。
仕事内容や職場を変えて雇用を継続することも考えましょう。従業員とも話し合って、本人の希望も聞いておくことが望ましいです。
また、復職するタイミングに関しても会社側で一方的に決めるべきではありません。特に休職理由が傷病、精神疾患などである場合、時期を早めることで症状が悪化してしまう危険性があります。
そのため従業員本人が復職を求めている場合でも、医師の診断書を提出してもらうなど、復職することに問題がないことを確認しておく方が良いでしょう。