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パワハラ対策で企業が取るべき措置| 防止策や被害者従業員への対処について

不当解雇

パワハラ対策は、法律で定められた企業の義務です。実際にパワハラが発生したかどうかを問わず、企業ではパワハラに対する措置をとることが求められます。

この法律上の義務を果たすため、具体的に何をしないといけないのか、被害者従業員への対処についてもここで解説しますのでご一読ください。

 

パワハラ防止は企業の義務

2020年からハラスメント防止対策が強化され、防止措置を講ずることが事業主の法的義務となっています。中小事業主については期間の猶予が設けられていたのですが、それも2022年から全面的に施行され、企業の規模問わず義務化されています。

 

※ここでいう「パワハラ(パワーハラスメント)」とは、被害を申告する方の主観のみにより判定されるのではなく、少なくとも次の定義に該当する行為をいう。

  • 職場での優越的な関係が背景にある言動
  • 業務上必要かつ相当な範囲を超える
  • 従業員の就業環境を害するものである

 

パワハラ防止措置の義務内容

企業は、日頃から従業員の意識啓発を行うとともに、パワハラ防止対策の周知徹底を図ること、相談しやすい窓口を設けられているかどうかのチェックを行う必要があります。

その上で、事案が発生したときは素早く対応し、行為者への措置や被害を受けた方の救済にもあたらないといけません。

 

パワハラ防止の方針を従業員に周知・啓発

パワハラを防止するという方針を明確にし、これを全社的に周知しないといけません。

そこで、就業規則やその他社内規程にその旨を明記するなどの対応を取りましょう。明確化の方法や周知の方法まで詳細に決められているわけではありませんが、「要件を形だけ満たせば良い」などとは考えず、「どうすれば本当に従業員に知ってもらい、意識を高められるのか」と考えてその実現化に向けた取り組みを行うことが大事です。

また、従業員側にも①企業が実施する措置への協力、②ハラスメント問題への理解を深めて言動に注意すること、の責務があります。少なくともどのような行為がパワハラとなり得るのか理解してもらう必要があるでしょう。一般用語としての抽象的な理解で終わらせるのではなく、法令上の解釈として次のように行為類型があることも示しましょう。

 

《 パワハラの例 》

 

  • 身体的な攻撃
    例)物を投げつける
  • 精神的な攻撃
    例)叱責を長時間繰り返す
  • 人間関係からの切り離し
    例)複数人で結束して無視をし、孤立させる
  • 過大な要求
    例)本来必要な仕事とは別に、雑用の処理までも強要する
  • 過少な要求
    例)嫌がらせをする意図で、わざと仕事を与えない
  • 個の侵害
    例)勤務時間外のプライベートの時間に対しても監視を続ける

 

相談窓口と担当者の設置

企業には、パワハラへの相談に応じて適切に対処するための体制を整えることが義務とされています。

そこで次の2点を実施しましょう。

 

  1. 相談窓口を作ってその事実を従業員に知らせる
    • 対応を外部の機関に委託するのも良い。
    • 手段については面談だけでなくメールなど複数の方法を用意することが望ましい。
  2. 窓口の担当者が適切に対応できるように準備する
    • 留意点をまとめたマニュアルを作成するなどして、円滑で適切な対応ができるようにすると良い。
    • 研修を受けてもらい、事案が発生したときの対応についての学んでもらうと良い。

 

また、相談の窓口を設置するのであれば、併せてセクハラ・マタハラ等のハラスメントもまとめて対応できる体制を整えておくことが望まれます。企業にとっては負担もかかることですが、こうしたハラスメント全般の防止に積極的に取り組んでいるという姿勢は社会からも高く評価してもらえます。

 

迅速な事後対応

パワハラが発生してしまった場合の、迅速・適切な対応も企業の義務です。

「企業がすぐに動いてくれなかった」「まともに取り合ってくれなかった」といった事態は被害者従業員からの不信感につながりますし、一般消費者あるいは取引先からの信用問題にも関わってきます。

そこで次の4点を適切に遂行していきましょう。

 

  1. 速やかに事実関係を把握する:
    当事者双方の主張を聞く。意見にズレがあるときは第三者からも事情を聴く。
  2. 速やかに被害者に配慮した措置を取る:
    行為者と距離を置くための配置転換。行為者からの謝罪など、当事者間の関係改善に向けたサポート。専門家による被害者のメンタルヘルス対応など。
  3. 行為者に対する措置の実施:
    就業規則やその他社内規程に基づく懲戒処分、その他必要な処分を実施する。
  4. 再発防止措置の実施:
    ハラスメントについて、意識を啓発する研修・講習を改めて実施する。

 

相談者への配慮

相談窓口を設けるなど形だけの体制を整備しても問題は解決されません。実際に被害を受けた方の心情、状況を考慮し、パワハラが防げる・パワハラを相談できる環境を作っていくことが大事です。

その観点から、次の2点については講ずることが求められています。

 

  1. プライバシーを保護する措置を講じてその内容を知らせる:
    相談した事実やパワハラを受けた事実を知られたくないと考える相談者等への配慮が必要。安易に情報が出回らないように体制を整えて、安心してもらうためにその措置に関して社内で知らせることが大事。
  2. 相談をしても不利益を受けないことを定めて周知・啓発する:
    相談を安心してできるよう「相談等を理由に不利益な取扱いをされない」ことを規則として明確化し、その事実を知らせ、啓発することが大事。

 

パワハラ被害を受けた従業員への対処法

上述の通り、パワハラを相談してきた方に対しては真摯に向き合い、迅速に適切な対処を取ることが大事です。

その前提として「相談しやすい環境づくり」も大切です。被害を受けた方が萎縮して相談を躊躇してしまうことも十分に考えられます。そのような方を想定した窓口の設置が欠かせません。

そしてパワハラの事実が確認できたときは、行為者を引き離すなどして被害が大きくならないようにしましょう。また、不利益を受けていたときはその回復を図ること、精神的なショックが大きいときは産業医や保健師、衛生管理者などの専門スタッフによるケアも検討します。

被害者本人の希望に応じて復帰ができるように積極的な支援も行うべきです。

 

相談を受けた後の流れ

何らかの措置を取るつもりがあっても、時間がかかりすぎると被害者から「会社は何もしてくれない」と思われるおそれがあります。被害相談を受けた場合どのような流れで対応を進めていくのか、全体像を掴んでおきましょう。

 

ヒアリング

本人へのヒアリング

行為者へのヒアリング

第三者へのヒアリング

事実確認

【誤認と判断したとき】

本人と行為者に説明し、再発防止措置を取る。

【事実と判断したとき】

取締役や人事担当、労働組合などのメンバーで協議する。

随時本人に経過説明

判定

【懲戒処分に値しないとき】

・配置転換

・行為者謝罪

・関係改善援助

・不利益回復

・職場環境回復

・メンタルケア

などの措置。

【懲戒処分に値するとき】

・譴責

・出勤停止

・諭旨解雇

・懲戒解雇

などの措置。

解決

再発防止措置を講ずる。

 

被害の状況に応じて臨機応変に措置を講ずることも大切です。パワハラ被害者に寄り添った対応を心掛け、その方針を全社的に周知するようにしましょう。